気になっていた『ノーヴィス』を観た。結果都内での上映も終盤に滑り込んで観た次第である。
狂気に近い鍛錬に臨むボート部女子の物語であり、なかなか凄まじい映画体験をさせてくる作品であった。
そんなわけで感想なんかを書き記しておきたい。
※以下、映画の内容に触れているのでご注意ください。
『ノーヴィス』のおおまかなあらすじ
9月、大学の新入生アレックス(イザベル・ファーマン)は女子ボート部の門を叩く。
J・F・ケネディの言葉「困難だから挑戦するのだ」を胸に、彼女は全身全霊で練習に打ち込んでいく。それこそ練習中に嘔吐に失禁と凄まじい追い込み方である。
スポーツ万能な同期ジェイミー(エイミー・フォーサイス)にライバル心を燃やすアレックスだったが、ジェイミーはアレックスに対し他のゆるい部員とは違うものを感じ連帯感を感じ練習に臨んでいた。先輩の怪我により1つだけ空いたレギュラー枠を賭けて二人はシートレースで争うことになり、どうしてもボート部で結果を出して奨学金をもらう必要があるジェイミーは先輩を抱え込んで選考会でレギュラーを獲得する。
アレックスは女性TAのダニ(ディロン)と恋仲になりつつ、コーチからシングル艇での練習許可をもらい自主練を重ね実力と自信をつけてゆく。しかしさきのジェイミーの不正の糾弾やたしなめる先輩に対する反発から部内で孤立し、次第に彼女の中の狂気が溢れ始める。
3月、春季合宿にて。雨が降りはじめた夜明け前、個人レースが開催される。
アレックスは積み上げた執念を伴い、シングル艇に乗り込むのであった。
『ノーヴィス』のほんわか感想
凄まじい作品であった。
なにかに追われるように、自らを追い込むように学校を駆けずり回り全力で挑み続けるアレックスを演じたイザベル・ファーマンの演技がまさに迫真である。自傷してしまったり、しばしば爆発的に想いが出てしまうシーンなどはかなりヒリヒリとしてくるものがあった。
音響デザインとしてキャリアを積み上げたローレン・ハダウェイ監督の作品だからか、音響には偏執的なほどのこだわりが感じられる。アレックスの頭の中に暗示のように鳴り響く音像を体験させ、そこから畏怖にも近い想いを感じさせてくる。
またピントの合う範囲が異常に狭い映像は彼女の自ら追い込んだ集中力のフィルターを通した視界を体験させ、これまた鬼気迫る彼女の内側を思い知らされるようである。
そんな作り込まれた音響と極端に浅い被写界深度でもって、観る側に狂気に限りなく近い執念を突きつけてくる。あまりのことに没入し難く、しかし魅入ってしまう特異な映画体験ができる作品であった。
おわりに
ということで、『ノーヴィス』を観た!という話である。キービジュアルで惹かれて気になっていたのだが、ギリギリ観ることができて良かったと感じられる作品であった。
ラストのアレックスの観客を見据えるかのようなカットにはなにやらドキリとする。
凄まじい映画体験ができる特異なスポーツ映画である。

