先日ユーロスペースにて草場尚也監督の映画『雪子 a.k.a.』を観た。
これがものすごく良かったのだ。
そんなわけで感想なんかを書き記しておきたい。
2025/4追記
なんとイオンシネマをはじめとして拡大公開が決定した。是非多くの人に観ていただきたいところ…!
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— 映画『雪子 a.k.a.』公式 (@yukiko_aka_) April 18, 2025
🗣 公開初日から約3ヶ月👏
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💡*\雪子a.k.a./*💡
イオンシネマ17館等で
追加決定し拡大公開🎉
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本日から 福岡|#UCトリアス久山
佐賀|#シアターシエマ でも公開です✨#目指せ100館 #雪子aka pic.twitter.com/q51J7Hqaig
※以下、映画の内容に触れているのでご注意ください。
『雪子 a.k.a.』のあらすじ
雪子(山下リオ)は小学校の教員で小4を担任している。趣味は最近始めたラップ。優しい彼氏もいる。もうすぐ30歳を迎えようとしていた。そしていつも不安を感じている。
不登校になってしまった児童の家へ毎週通うも彼は一向に姿を現さず、宿題の出し方で児童の親からクレームが入ってしまったりするし、彼氏(渡辺大知)ともどこか噛み合っていないようである。しかし雪子はおどおどしながらも精一杯生活していた。唯一、ラップをしているときだけは本音を言えている気がしていた。
ある日、サイファーへやってきた雪子は、そこに来ていたラッパー・アザミ(椿)から指名されてバトルをすることになってしまう。どうにか言葉を紡ごうとする雪子だが、やはりおどおどしているうちに相手にコテンパンにやられ、自分の本音だとおもっていたことが否定されてしまう。いい先生、いいラッパー、いい彼女に…なりたい? と自問自答しながら誕生日を迎え…
といった感じである。
『雪子 a.k.a.』の感想
不安に向き合い自分に向き合う
心震える傑作であった。
この映画はラップをあつかっているものの、バトルに勝つなどということに主軸が置かれるわけではない。あくまでもひとりの女性が日々の生活のなかの諸々の不安に足掻きながらも、その不安と、ひいては自分と向き合っていく映画である。
インタビューによれば草場監督は「抑圧された感情からの解放」をテーマに据えており、そのきっかけとしてラップがある。ラップを通して、一度雪子はある種否定をされ、そしてラップにより自らの言葉を獲得していくのだ。
仕事では学校の生徒達にも、本音が言えていない気がする。彼氏からのプロポーズのようなものに対しても本音が言えない。そうして30歳の誕生日を迎えてしまった彼女は、ばったり会った先輩の大迫先生(占部房子)につい不安のかたまりを吐露して泣き崩れる。その後、後輩の石井先生(樋口日奈)も交えて誕生日を祝ってもらうことになり、価値観の違うふたりの同僚との会話の中で、「不安でたまらない自分だからこそできていたこと」だってあるのだと気付かされる。このシーンがとても良い。「自分で気づいたことの方が、誰かが決めた正解より勝ちがあると想いませんか」という大迫先生の言葉が大変心に残る。
諸々を経てたどり着く、クライマックスとも言えるセッションシーンにおいては、雪子の抑圧されていた感情が開放され、溢れ出てくる言葉を紡ぐ晴れやかな姿に涙が止まらなかったのであった。
不安とともに前に進むことを決めた雪子は、まだ頼りなさげだがそれでもカッコよかった(観てから数週間経っているが思い出したらまた込み上げてくるのである)。
『a.k.a.』とは『also known as』のことで『~としても知られている』という意味となっている。
冒頭の曲「a.k.a(feat.雪子)」でも述べられているように、雪子には様々な呼び名が出てくる。学校では「雪子先生」、彼氏や友人といるときは「ユッキー」、ラッパーとしては「MCサマー」、父と会えば「雪子」。それぞれが雪子の一部だったが、経験の後にそれぞれが非常に近いものになっていくような感覚がある。『雪子a.k.a.◯◯』がなんであれ、もうそれは雪子と言えるに違いない。
主演の山下リオと、脇を固める役者陣がとても良い。
演技も脚本も素晴らしい作品である。
『雪子 a.k.a.』のサントラも良い
おわりに
ということで、『雪子 a.k.a.』を観た!という話である。
鑑賞時点では2025年のベスト筆頭に挙がるくらい好きな作品となっている。


